はじめに

2011年3月11日、東北地方に大きな地震と大規模な津波が発生した。
この時、被害が大きい場所の一つに陸前高田市の名が挙がっていたことは記憶に新しいが、同市にある陸前高田市立博物館では大半の学芸員が落命、建物の損壊、資料の流失など甚大な被害を受けた。
その現場に残された動植物関連、民俗系等多岐にわたる博物館収蔵資料の一部は岩手県の博物館・文化財関係者によって回収、植物標本などの資料については、岩手県立博物館において洗浄が行われているが、写真資料については専門知識が必要なため、メンバーの一人に、それらの修復保存について相談が寄せられた。
そのメンバーの呼びかけで、写真の知識を持つ専門家が集まり、ボランティアによる安定化処理とデジタル化を目的とする「陸前高田被災資料デジタル化プロジェクト実行委員会」を結成するに至った。
こうした資料写真は現在同実行委員会で保管している。だが、津波の被害によって、海水、土砂を中心とした汚染が進行している。乳剤の剥離に伴う画像の消失も深刻な状況まで進行しており、カビ、腐敗等の問題も懸念される。しかし、これらの画像は、落命した陸前高田市立博物館の学芸員が調査した研究資料であり、成果として結実する前の原石である。この研究を継承して進めることは陸前高田にとどまらず、東北、日本にとって重要な研究となり得る。このような研究情報を含有した原資料についてはドライクリーニングを中心とした安定化処理を行い、資料本体の経過観察を行う。これと共に、研究を継承するために画像情報をクラウド・システムへのアップロード(クラウディング)する。また、画像に付帯する文字情報などの周辺情報や被災した台帳資料および本資料群をリスト化したデータについても並行してクラウディングを行う作業を行っている。また、平成23年10月同博物館の収蔵資料である昭和初期に撮影された鳥羽源蔵資料も被災していることがわかり、本プロジェクトでの作業対象として加わった。本資料群は1,770点のゼラチン乾板を含む史料だが、経年と津波被害によって画像の圧着や劣化が見られる。これらの資料についても同様に安定化処理を行い、クラウディングを進めている。
なお、本プロジェクトは趣旨にご賛同戴いたCIPAフォトエイド、全国美術館会議、東京工芸大学、株式会社 堀内カラー、コメット株式会社、株式会社ニコンイメージングジャパン、フォトギャラリーインターナショナル、東京都写真美術館、早稲田システム開発株式会社、東京綜合写真専門学校の協力得て活動を行っている。

陸前高田被災資料デジタル化プロジェクト実行委員会

このプロジェクトはCIPAフォトエイドの助成を受けています。
このプロジェクトは全国美術館会議の支援事業です。